死の海から73人のベトナム人難民を救出した日本人船長の涙。20年前、17歳だったソン少年は今、神父となり、過去をたどる旅に出る。

　「ぼくは気づいた。これは出せなかった手紙なのだと。今まで、どんなに昔のことを思い出しても、悲しさで涙を流したことなどなかった。常に気持ちを捉えて過去と対峙していたからだ。しかし、何の心構えもなく、突然目の前に現れた昔の自分にぼくは動揺した。そして、この手紙をためらいながらも必死にしたためていた自分の気持ちを思い、ぼくは泣いた。」（本文より）